淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
おっと、口が滑った。
考えていたことをそのまま口に出してしまい、慌ててしまう。

「なんでもない、忘れて」と適当に誤魔化すと、知花をソファへと座らせた。

ソファへ腰掛けた知花は、広い部屋が落ち着かないのかずっとソワソワしている様子だ。まぁ、そういうところがまた可愛いんだけど。


「知花、お待たせ」
「あ、ありがとうございます」


淹れたてのコーヒーを渡すと「いい香り」と言いながらマグカップを鼻へと近付ける知花。

彼女の仕草一つひとつが可愛くて、腰に手を回し知花を自分の方へと抱き寄せた。驚いたのか、知花の身体が一瞬固くなる。


「あ、あのっ……」
「ごめん。知花が可愛くてつい」


あぁ、ダメだ。
知花に少し会ったら仕事に戻るつもりだったのに。

こんなにも可愛い彼女を目の前にして、1ミリも触れずに仕事に戻れるわけがない。


「知花、抱いていい?」
「えっ」

「嫌なら、俺はすぐ仕事に戻る」


知花は頬を真っ赤に染めて、俯いた。


「……あのっ、私。この前の夜のこと、まだ全部思い出せていなくて……」
「うん」
「う、上手く……出来ないかも、です」

「そうか。なら、今から俺が思い出させてあげるよ」


そう言いながら、知花が持っていたマグカップをガラステーブルの上に置いた。
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