淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
母に促され家に入った岡林先生。彼が我が家に足を踏み入れるなんて、なんだか不思議だ。

リビングに入ると、新聞を読んでいた父がこちらへ顔を向けた。


「初めまして。岡林幸聖です」

「あぁ、いらっしゃい。待ってたよ」
「座ってね。今、コーヒーを淹れるから」


母にそう言われた通り、父と向かい合うようにして腰掛けた彼は背筋をピンと伸ばし、緊張しているようにも見える。


「今日は、知花さんとの交際と同棲を許していただきたく……」
「そんな堅苦しいあいさつはいらないよ。……知花のこと、よろしく頼む」

「お父さん……」


岡林先生の言葉を遮ってそう言った父は、深々と頭を下げた。淡々と話を進める父は、最初から結論を決めていたかのよう。

まだ結婚するわけではないけれど、父の言葉に目頭が熱くなる。


「もちろん、一生大切にします」

「ありがとう」
「知花のこと、よろしくお願いしますね」


父に続いてそう言った母も、にこにこと嬉しそうに優しい眼差しで私たちを見つめている。

『会って欲しい人がいる』と、いきなり表れたのにも関わらず、交際と同棲を許してくれた両親。

悠稀と別れたことでたくさん迷惑を掛けた分、次こそは幸せになると、そう誓った。
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