淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
* * *

「はぁ……緊張した」


私の両親へのあいさつを終わらせた帰りの車の中で、岡林先生がポツリと呟く。

見た感じては緊張なんてしていなさそうだったから、少し驚きだ。


「岡林先生も、緊張することあるんですね」


赤信号で前を見据えたままの岡林先生は、ふいに私の方へと視線を移す。そして一気に私との距離を縮めてから「うーん」と唸る。

なにか言いたそうだったけれど、そのタイミングで信号が青に変わり、彼はアクセルを踏んだ。

……もしかして私、なにか気に触るようなこと言ったかな?


「知花。その〝岡林先生〟ってそろそろ止めない?」
「はい?」

「下の名前で呼んでよ、知花」


彼の言葉に、突然心臓が暴れ始める。

そ、それはつまり。岡林先生のことを〝幸聖〟と呼べと?


「俺の両親の前で〝岡林先生〟は変だろ?」
「あ……まぁ、それは……」

「ほら、呼んでみて」

「こ……幸聖さん、でいいですか?」


彼の名前を呼んだだけなのに、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。

ドキドキさせられっぱなしの私に、彼は運転を続けながら「まぁ合格」と、白い歯を見せて笑った。


「ところで知花。約束の物って持って来てくれてる?」
「あ、はい。後部座席に乗せてあります」
< 42 / 55 >

この作品をシェア

pagetop