淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
「ありがとう」と、私の頭に手を置いた幸聖さん。


約束の物ーーそれは、つい3日ほど前、私が彼のマンションに行ったときのこと。

仕事を終えて、21時頃にマンションに帰宅した幸聖さんは、食事をしながら私にお願い事をしてきてくれた。


『母の還暦祝いに、花束を造って欲しい』


初めはそんな大役を引き受けてもいいものなのか、戸惑いしかなかった。

でも、幸聖さんの『知花に造ってもらいたい』という熱い思いが伝わって、引き受けることに。

幸聖さんのお母様の写真を見せてもらったり、雰囲気を教えてもらったりして花束のイメージを作り上げ、今朝、店長に許可を得て花束を造らせてもらった。

基本的にショップには季節関係なく様々な種類の花が置いてあるけれど、還暦祝いの花束はやっぱり特別だ。

6月に咲く、オレンジ色のユリとスイートピー、小ぶりの花びらを持つ白のランタナという花を組み合わせ、花束を完成させた。

ラッピングも、普段より少しだけ華やかにしてある。


「見るのが楽しみだ」
「気に入ってもらえるといいですけど」

「知花の造った花束なんだから、気に入らないわけないだろ」


そう言いながら、幸聖さんは笑顔を見せた。

そんな風に言われると、なんだか照れ臭い。
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