淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
就職したばかりの頃は、贈る相手の雰囲気から花束のイメージを作り上げるのが本当に難しく、閉店後も遅くまで練習していたっけ。

上達して、お客様に『またお願いしたいです!』と言われたときの喜びは一生物だ。


「さて。着いた」


到着したのは、住宅街の中にある一軒家……だけど、豪邸すぎて一際目立っている。

私、今からここに行くんだよね?


「知花?」
「……本当に、ここへ?」

「あぁ。無駄に広いんだよ。今は、父と母しか住んでいないのに」


そう言いながら、幸聖さんは運転席を降りると、助手席側に回ってドアを開けてくれた。

ついでに後部座席に乗せてある白い紙袋を手にした幸聖さんは、中身を覗いて「お、お袋のイメージにぴったりだ。さすが知花」と感激している。


「行こう。そんな緊張しなくてもいいよ」
「は、はい……」


私の手を取り中へと進む幸聖さんは、空いている方の手で玄関チャイムを鳴らした。

しばらくすると中からパタパタと足音が近付いてきて、ドアが開く。


「ただいま」
「まぁ! いらっしゃい。可愛い彼女さんだこと」

「はっ、初めまして! 本郷知花です」
「幸聖から話は聞いてるわ。さぁさぁ、中に入って休んで」


身長156センチの私と同じくらいの小柄で可愛らしいお母様は、2人分のスリッパを準備してくれた。
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