淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
すごい。花にも『花言葉』があるように、カクテルにも『カクテル言葉』というものがあったんだ。

飲みに行くときは友香梨とで、だいたい居酒屋でビールとチューハイを飲むくらい。
まだまだ知らないこともあるもんだ。


「あの……じゃあ、これを」


メニュー表を指差して、店員さんにオーダーする。


「おっ、ピニャコラーダね」


店員さんは、今の状況を理解したような視線を私に向けた。

あぁ……もう、どう思われたっていいや。
今は、全部忘れたいんだもん。


ピニャコラーダ――淡い思い出。


もう、悠稀とのことは思い出にしよう。
今度こそ、もうあのマンションへは二度と戻らない。

次こそ素敵な男性を見つけて、幸せな人生を送る。
って、もう20代も後半なんだけど。

そんなことを考えていると、オーダーしたカクテルが目の前に置かれた。

爽やかなパイナップルの香りが、鼻筋を通り抜けていく。


「きれい……」

「ベースはラム酒。それにパイナップルジュースとココナッツミルクがシェイクしてあるから、飲みやすいよ」
「ありがとうございます。いただきます」


ドキドキしながら、カクテルを口へと運んだ。

パイナップルの甘酸っぱさが、甘いココナッツミルクといい感じにブレンドされている。
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