淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
どんなに謝罪の言葉や優しい言葉を述べられたって、私の心は揺らがない。

絶対に、悠稀のところへは戻らない。


「私には、もう離れたくない人がいるの」
「まさか、この前の男か……?」

「そう。私のこと、たくさん愛してくれるの。悠稀と過ごしていたときより、幸せなの」


どんなに忙しくても、私のことを愛してくれる幸聖さん。

職場で看護師さんからアプローチを受けることもあるみたいだけれど「大切な人がいるから」と、きっぱり断っているらしい。

そんな彼のことを、裏切るようなことはしたくない。


「どうしても……か?」
「うん」

「そうか……大切にしてやれなくて、ごめん」


そう言った悠稀は、脱力した様子でふらふらとその場を離れて行く。

やっと、終わった……のかな?
これでもう、悠稀は私の前には現れないと思う。

でも、大切な人を〝大切だ〟と気付くのは、失ってからでは遅い。悠稀には、もう2度と同じことは繰り返さないで欲しい。

悠稀の背中を見つめながら、そんな風に思う。


「知花!」
「あれ、友香梨。休憩は?」


悠稀が去ったあと、慌てた様子でお店に出てきた友香梨。まだ、休憩時間が残っているはずなのに。


「防犯カメラに、元カレっぽい人が見えたから慌てて出てきたの。大丈夫だった?」
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