淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
玄関のドアを開けるとリビングの明かりが点いていて、幸聖さんがなにかしていた。

(かす)かだけれど、いい香りが鼻をくすぐる。もしかして、彼が夕食を作ってくれたのだろうか。

当直明けで疲れているのに申し訳なかったな……と思いつつ、ドアノブに手を掛けた。


「ただいま帰りました」


リビングへ繋がるドアを開けた瞬間、私の目に飛び込んで来たのはーー。


「知花、おかえり」
「え? ちょ……これ、どうしたんですか?」


ダイニングテーブルの上には、本格的なフレンチ料理が並んでいる。

そして、幸聖さんが手にしているのは……。


「知花。この花束を、君に渡したかったんだ」


最高の言葉とともに手渡れたのは、真っ赤な108本のバラの花束。

それだけではない。花束の中央には、キラキラ輝くダイヤモンドの指輪が見えた。


「え、ちょっと……状況がいまいちわからなくて……」

「サプライズ。フレンチも、シェフを呼んで作ってもらったんだ」
「えっ!?」


まさか、そんなことをしてくれていたなんて思ってもおらず、驚きで声が大きくなる。

それでも、私の驚きっぷりに満足したのか、幸聖さんは嬉しそうな笑顔を私に向けていた。


「本当は違うシチュエーションでするつもりだったんだけど、なかなか時間が取れなくて」
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