淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~

店長さんの独り言

雨がシトシト降る、6月。


「すみません。このバラの花、108本お願いしたいんですけど」


紺色の大きな傘を差してお店に訪れた長身の男性は、真っ赤なバラの花を指差した。

バラを108本。つまり、プロポーズでもするということか。


「いいですよ。日にちを指定してくだされば、それまでにご準備させていただきますので」
「ありがとうございます。では、1週間後でお願いできますか? このカスミソウも一緒に」

「承知致しました」


それくらいの指定日ならば、取り寄せ可能だ。この時期は、やはりバラの花の売れ行きがいい。

ラッピングの参考にするため、私は男性にお相手の雰囲気を尋ねる。


「名前に〝花〟という漢字があるんです。本当に花のように可愛くて。心も優しい」


彼女のことを思い出しながら言っているのだろう。男性の表情が緩んだのを、私は見逃さなかった。

この様子だと、相当彼女に惚れ込んでそうだ。


「すみません。ただの惚気みたいになってしまって」
「いえ。わかりやすく教えてくださって助かります」


そう言いながら、私は受取票に必要事項を記入して、男性に手渡した。それを受け取ると、男性は笑顔でお店を出て行った。


……確か、知花ちゃんはピンク色が好きなんだっけ? 以前、そんなことを話していたような。

よかった。
そろそろ知花ちゃんにも、幸せが舞い降りそうだ。

*END*
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