淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
店員さんが言っていた通り、飲みやすかった。


「嫌なことあった日はね、気分転換も必要さ」
「……はい」

「君、美人だから。すぐに次が見つかるさ」

「………」


やっぱり。私が失恋したことを理解していたんだ。

職業柄? それとも、私が失恋オーラを醸し出していた?
どっちにしろ、バレていることには間違いない。


「ずっと尽くしてきたんですけどね」
「男なんて、そんなもんさ」


とりあえず誰かに聞いて欲しくて、つい先ほどの出来事を話してしまった。

でも、なにも言わずに聞いてくれる店員さんに今は感謝だ。

誰かに話すことで気分も晴れるし、もしかしたら気持ちも変わるかもしれない。

いや……それはないか。
悠稀とはもう終わりにするって、さっき決めたじゃない。

でも、こんなにも尽くしてきた自分がなんだか惨めで鼻の奥がツンと痛くなる。

繰り返し浮気された側って、こんなにも惨めな気持ちになるんだ……。

そんなことを考えつつ、カクテルを飲み干したとき。


「お? 岡林じゃないか」


右手を挙げて、親し気に〝岡林〟と名前を呼んだ店員さん。

気になって振り向くと、長身の男性が私のすぐ後ろに立っていた。
店員さんの、知り合いなのかな?


「こんな時間に珍しいじゃないか」
「あぁ。ちょっと仕事で疲れてな、飲みたくなったんだ」
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