天河と七星




四月になり天河が部長として就任した。

「主任。B棟の第八研究室」
「主任。五階の電算室」

天河は私を『中條』とは呼ばず役職で呼ぶ。呼ばれるたびにこれは仕事なのだと、緊張感が走る。

ここの研究施設は馬鹿みたいに広い。私みたいな末端の人間はほとんど移動しないけれど、部長ともなればあちこちに顔を出さなければならないらしい。
普段は自分で歩くって言ってたけど、この二カ月毎日ほとんど車椅子移動。こっちの体力のほうが持たない。

遠慮など微塵もなく天河は私に車椅子を押させる。私はそのたびに自分の作業の手を止めるものだから、残業が増えた。
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