天河と七星
「いいなあ、主任。九条部長を近くで見れて」

デスクに戻ってくると岩井さんが羨ましそうにしていた。

「岩井さん、部長が好きなの?」
「だって、どこか俳優の久我大河に似ててかっこいいじゃないですか!優しいし、仕事もめっちゃできそうだし。ハイスペックを絵に描いたよう」
「じゃあ次はぜひ代わって?」

「主任、F棟の大会議室」

早速、チャンス到来。私が返事をする前に岩井さんがスッと立ち上がった。

「部長、主任は手が離せないので私が」

「ありがとう。でも岩井さんにはさっき書類の作成をお願いしたばかりだったよね?僕のことは大丈夫だから、仕事の方を進めてください」

天河に俳優も顔負けの特上の笑顔を向けられた岩井さんは、とろけそうな顔で座り直した。
笑顔にごまかされてるけど、岩井さんには車椅子を触らせもしない。

あきらめたのか、天河は車椅子を降りゆっくりと歩いて部屋を出ていった。

< 15 / 67 >

この作品をシェア

pagetop