天河と七星
記帳を済ませると、結婚パーティ会場であるホテルの中庭へと案内された。
会場には三月のやわらかな陽が降り注いでいる。

新婦になったマナは輝くような笑みを浮かべていた。

学生の頃から将来の夢を語りあった唯一の友人。
マナの夢は医師。
私の夢は宇宙開発の研究。

マナは努力をし、夢を叶えて医師になった。

だけど、私は。

胸の奥に押し込んだ過去が、チクリと痛みを起こす。


マナから結婚の知らせを受けた時は、彼女の掴んだ幸せを喜べるか心配だった。
幸せを妬む気持ちになったらどうしよう、と。


「七星!来てくれてありがと!」

マナが私を見つけて大きく手を振った。

「おめでとう、マナ」
「ありがとう。今度また朝まで飲みあかそう」
「こらこら、新婚さんを朝帰りさせるわけにはいかないよ。
丹下(たんげ)さん、マナをよろしくお願いします」
「私のことは気にせず今まで通り付き合って下さい。中條さん、これからもよろしくお願いします」

マナの旦那さんは弁護士だと聞いている。初めて会ったけれど知的で落ちついた人だ。バタバタと忙しいマナを優しく見守ってくれそう。

マナ、いい人と出会えたんだね。

幸せいっぱいのマナをこの目で見て、私の胸はあたたかい気持ちでいっぱいだった。


でも、幸せな空気に満ちたこの空間は居心地が悪い。
パンプスで足も痛い。
見知った人もいないし、マナに挨拶できたしもう帰ろう。

私がそっと会場を後にしようと歩き出したその時だった。
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