天河と七星
「まもなくここの部署は解体する。キミ達の行っている作業は開発したシステムでまかなえるから。
目の前で見ただろう。一時間が五分になった瞬間を。さらに開発が進めば秒単位で終わる」

確かに見てしまった。
効率化を図るなら真っ先に合理化されておかしくない作業だった。納得するしかない。

「私はどうなりますか」
「異動か、転職するしかないな」

転職となれば社宅も出ていかなくちゃならない。住むところもなくなってしまう。
目の前が真っ暗だ。

「宇宙開発プロジェクトを成功させるために僕の補佐をしてほしい」

天河には私が九年前のままに見えているのだろうか。
今の私は夢も希望もなく、ただ仕事をしてお金を稼ぐだけの人間だというのに。

「無理です」
「なぜ」
「それを聞くんですか?
宇宙開発部門はCOOGAの中でもエリート中のエリート。私に務まるわけがない。
九条部長。どうして今さら私の前に現れたんですか。忘れてくれなかったんですか。
九年間磨いてきたスキルも一瞬にして取るに足りないものだったと証明された。私は価値のない人間です」

不思議。涙なんて、とっくに枯れ果てたと思ったのに。ばかみたいにボロボロとこぼれてくる。

そんな私を天河はふわりと優しく包むように抱きしめてくれた。

九年ぶりの天河の抱擁。優しさは変わらないけど、体が一回り大きくなった気がした。
以前は時々不規則になった心臓の音が、規則正しく聞こえてくる。
< 21 / 67 >

この作品をシェア

pagetop