天河と七星
「離して、ください」

口ではそう言いながら彼の抱擁から抜け出せない。
情けないけれど、私はこのぬくもりをずっと待っていた。

でも、天河は?私のことどう思っているの?
なぜこんなに優しく抱きしめたりするの。

「ごめん。泣かせるつもりはなかった。
そうだね。七星は僕より安定した生活を選んで、僕は七星のために距離を置いたんだ。
離婚届は出せなかったんだよ。出してしまえば七星との繋がりがなくなってしまう。それが怖かった。
行きたい部署があるなら異動願いを出して。希望に添えるようにする。転職希望なら止めないよ。
七星の答えを尊重する。好きにするといい。
でも。
僕を選んでくれると信じてる」

どうして急にそんな優しい声で言うの?
封印したはずの恋心を抑えきれなくなるじゃない。
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