天河と七星
第三章 初恋のまほろば
天河との出会いは九年前の三月。
私は大学三年生。天河は高校を卒業したばかりで病院に入院中だった。

私は入院していた七海(ななみ)の面会を終え、病院内のカフェで一息つきながら雑誌を読んでいた。
たまたま通りかかった天河が雑誌に気づき、自分もそれを読んだと声をかけてきたのだ。

宇宙工学の権威ステラ博士の論文が掲載されていた雑誌。専門用語だらけの英語の論文をまだ十八歳で読んだのかと驚いたものだ。

それからは病院に行くたびにカフェで天河と待ち合わせをして、飽きることなく宇宙について話をするようになる。
私は大学の理工学部で宇宙工学を専攻していたけど、大学内でもこれほど話が合う人はいなかった。

あの頃の私にとって天河は、話の合う年下の天才少年でしかなかった。

それが。
忘れもしない。天河を男性として意識するようになったのは、彼の病室で彗星を観測した夜からだった。

天河は私を誘うのに、すごく勇気がいったと言っていたっけ。
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