天河と七星

目が慣れてくると望遠鏡をのぞく天河の整った横顔が見えてきた。

整ったきれいな横顔だった。
まるで王子様みたい。フリルのたっぷりついたシャツとか似合いそう。

天河と一緒にいるときは現実を忘れられた。
ただおしゃべりするだけで、それだけで良かったのに。
まさかふたりきりで一緒に彗星を観測するなんて。

お互いの吐息さえ聞こえるほどの距離で、夢中になって望遠鏡をのぞく。

「七星、見て!これじゃない?」

望遠鏡をのぞいてはしゃぐ天河。

なんて、かわいいんだろう。
まるで子犬を見ている気分。

天河は私の手を引き寄せ望遠鏡へと導く。
初めて触れた天河の手はほんのり温かく、華奢だけれど大きな男の人の手だった。

暗い病室に男の子と二人きりということを、ふと意識してしまった。

「うん。そうだね、これだね」

望遠鏡をのぞきこみながらも天河の手が気になってしかたない。次第に私の手が汗ばんでくる。手を離してほしいのに、興奮している天河は手だけじゃなく私の体までも抱き寄せ、頬をすり寄せてきた。

「やったぁ!ブルックス彗星見えたぞ!」

こんなふうに誰かにぎゅっと抱きしめられるのは初めてだ。
抱き寄せられた体は温かい。

温かいというより、熱い?
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