天河と七星

急にわぁっと大きなざわつきが起きた。

何だろう。何かサプライズの演出でもあるのかな。

「あ…あれ!久我大河(くがたいが)じゃない?」
「うそ!本物?」

久我大河。
子供の頃から世界的デザイナーJYUNNZO SUZUKIのモデルを務め、高校生の頃からは俳優業もこなし、いまでは超人気のアクションスター。
まさか彼が、芸能界に身を置くわけでもない二人のウエディングに来るわけがない。

そう思いながら人々の視線の先にそっと目をやる。

サラサラの茶髪。日焼けした小麦色の肌。ギラつくような大きな黒い瞳。黒のタキシードを恐ろしいほどスタイリッシュに着こなした姿が見えた。

間違いない。久我大河、本人だ。

先ほど押し込んだ過去が一気に蘇ってきて、私の体の機能を奪っていく。息をすることさえ辛くなるほどに胸が痛い。

彼が招待されているとは思いもしなかった。

久我大河はやや前のめりの体勢で、招待客をかきわけながら主役の二人のもとへと歩いてくる。
招待客がすっと道を開けたから、彼が前のめりの理由に気づいた。

彼は車椅子を押している。

その車椅子に座っている青年の姿に、私はさらに息を呑む。

サラサラの黒髪。透き通るような透明感のある白い肌、キラキラとした大きな黒い瞳。こちらも黒のタキシードに身を包んだ、久我大河と瓜二つの顔に新たなざわつきが起きている。

「久我大河がふたり??」
「顔のつくりは似てるけど、雰囲気がワイルドな大河とは正反対っていうか。貴公子って感じ。やば、真逆だけどふたりともかっこいい!!」

似ていて当然。二人は双子だもの。

まさか、マナのお祝いにきて彼の姿を見ることになるなんて思いもしなかった。
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