天河と七星


「それって、恋じゃない?」

大学の学食で友人のマナと久しぶりにランチ。マナは医学部で忙しく、一緒にご飯を食べられたのも久しぶりだ。
いつもは他愛もないおしゃべりをするんだけど、今日は天河の話題でもちきりになった。

「そんなんじゃないよ」
「七星と宇宙の話ができるなんて貴重だし。今までの七星じゃ考えられないよ?男の子とふたりっきりで天体観測なんて」
「変な言い方しないで」
「結構長く友達やってるけど、七星から初めて男の子の話を聞いたからさぁ。もしかしてって思ったんだけど本当に恋愛感情ないの?」
「相手はまだ18歳だよ?ないない」
「18歳なら結婚だってできる歳だよ。その子だって春からは大学生でしょ」
「そういえば…天河がどこに進学するか聞いてない。宇宙工学を学ぶなら、やっぱりうちの大学かな」

私の答えにマナは小さくため息をついた。

「なるほどね。あまり彼自身について興味ないのか。
まぁ、私も七星も恋してるヒマないしね。就活のほうはどう?」
「研究職は大学院卒が要件になってるところばかりでさ。結構厳しい。マナは?」
「私も単位ギリギリでさ。でも、絶対留年できないから。お互い、頑張ろ」

マナは私の家庭の事情も、私の夢もすべて知っている。
会って、お互いを励まし合って、元気を貰い合う。
唯一とも言えるほど気を許した友人だ。

そのマナに恋と聞かれて即答で違うと言ったけれど、違和感を感じていた。

恋じゃないなら、友情?それもなんだか違う。
この感情が、まだはっきりと名前のある形になっていないことだけは確かだった。

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