天河と七星

その日は七海が検査の日だった。
検査が終わるまで時間があるのでカフェに向かう。
天河は今日もいつもと同じ席にいた。その姿を見つけるとちょっとドキッとする。

マナに恋じゃないかと問われてから、ちょっと意識してしまう。
話を始めれば恋だとか忘れて没頭してしまうのだけど。


「七星?ここで何してるのよ」

夢中で天河と話をしていた私に、声をかけてきたのは七海だった。

「七海の検査が終わるのを待っていたの」
「探したのよ。検査なんてもうとっくに終わったわ」

七海の機嫌が悪い。七海はイライラするとすぐ癇癪をおこす。嫌な予感しかしない。
カフェで待ってると伝えたはずなんだけどな。

「僕が引き止めてしまったんだ。ごめんね、中條さん」

天河に話しかけられて七海は不審そうに眉をひそめた。

「……誰?」
「僕は九条天河。中條さんと同じ高校だった。七星さんをお借りしてごめんね」
「九条天河……あぁ」

七海は天河の名前に思い当たったようだ。私の隣にドスンと座ると、低く脅すような声で言った。

「彼、由緒正しき名家九条家の跡継ぎよ。あんたなんかが近づいていい相手じゃないわ」

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