天河と七星
そうだったのか。

七海の卒業した高校の生徒の中にはセレブと言われる家柄の生徒が多い。七海は自分の友人にふさわしい家柄の子をチェックしていた。
おそらく天河はその中に含まれていたのだろう。

「いや、中條さん、僕はこの通りポンコツだから」

七海の様子に天河が驚いている。

私には七海の様子から彼女が次に言う言葉がわかっていた。
私が人に知られたくないと知っていて、七海がいつも切り札として出してくる言葉。
背中を冷たい汗が伝っていく。

「犯罪者かもしれない外国人の血が流れているくせに。相変わらず身の程知らずね」

……終わった。
聞き慣れたはずの言葉なのに、胸が張り裂けるように痛む。
七海は父親のわからない私を蔑んでいて、人前で私を貶めるような言動をする。

初めてこんなに話が合う人と会えたと思ったのに。恋どころか、友情さえ育めなかった。

「中條さん、詳しい事情はわからないけれど、自分のお姉さんを貶めるような発言は感心しないな」
「お姉さん?冗談じゃない。七星と血縁関係ってだけで虫唾が走る。あぁ、具合が悪くなる。七星、行くわよ」

半ば無理やり七海に連れて行かれる。

落胆した?軽蔑した?
怖くて天河の顔が見れないまま、私はカフェを後にするしかなかった。


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