天河と七星
特別個室は相変わらずホテルのようだった。これだけで、天河の育つ環境の良さがわかるというもの。
それなのにこのあいだの私は見て見ぬふりをした。天河が私とは違う世界に住む人なんだとわかっていたのに。一緒に過ごす時間が楽しすぎたから。

あのとき、きちんと天河と自分の間に線を引いておけばよかった。

天河のおうちは代々学者を排出してきた名家九条家。現当主には跡継ぎの男の子がおらず、孫にあたる天河が九条家を継ぐことになったのだとか。
兄弟は天河と双子のお兄さんと、十歳下に弟さんもいるそうだ。

病室に置かれた山のような本を見る限り、天河は宇宙工学だけでなくもっと幅広く物理学全般に精通している。
入院ばかりですることがないからと本人は言うけれど、とんでもない天才だと思う。
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