天河と七星
「七星の名前の由来は、北斗七星?」

「たぶん。亡くなった母が子供に七星と名付けてほしいって。
母は私を産んですぐに亡くなったから、本当の理由はわからないの」
「お母さん、亡くなったのか。お父さんは?外国の人?」

母の死因を口にするべきか。
天河は大きな黒い瞳でまっすぐにこちらを見て私の言葉を待っている。私のことが知りたいと言うのは生半可な好奇心だけではないと彼の全身が語っている。
私は意を決して口を開いた。

「母はアメリカ留学の途中で妊娠して、日本に帰ってきて私を産んで亡くなった。私の父はわからない。
九条家ほどじゃないけど中條家も古い家で、外国の血が入った私は受け入れてもらえなかった。私は家政婦に育てられたの」

日本人離れした白い肌、はちみつ色の髪、色素の薄いグリーンを帯びたヘーゼルの瞳。
この全てが嫌悪の対象でしかない。
幼い頃から外国の血が混ざる私の容姿は汚いと言われ続けたから。

天河はそっと手を伸ばし私の髪に触れた。それから私の瞳をじっと見つめる。

こんな汚い色の髪に触れないで欲しい。
こんな汚い色の瞳をそんなに見ないで欲しい。

中條家でこの容姿を卑下されても慣れてしまっていたというのに。
今ほど自分の容姿に嫌悪を抱いたことはなかった。

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