天河と七星
「七星の瞳は星の光に似てる。すごく、きれいだ」
「きれい?この目が?」
「うん。僕は好き。この髪も瞳も、七星の全部が好き。
でも、わかる。古い家って伝統だとか妙なこだわりに縛られてる。
僕のところも三人兄弟で、長男だとか跡継ぎだとかうっとおしくて。僕は早々に離脱して母の実家に逃げたんだ」

さらりと天河の口をついて出た「好き」という言葉が、やけにすとんと腑に落ちる。

天河は私のことが好きなんだ。
率直にうれしかった。

「今は母の弟の大輔(だいすけ)さん家族と暮らしているんだけど、卒業したら就職して家を出る。
本当は高校卒業と同時に出るはずだったんだけど、先に七海の母が家を出て行ってしまった。
学生の間は家政婦代わりに家事や七海の世話を請け負ってあの家に留まっている。
実際、奨学金だけじゃ家賃までは厳しかったから、こちらにも利はあるの」

「でも本当は大学院でもっと勉強したいでしょ?このまま就職はもったいないよ」

「勉強したい気持ちはある。でも大学院じゃない。勉強を続けるならアメリカに行ってステラ博士に師事したいの。
アメリカに行けたら父も探したい。私のルーツを知りたいの。
七海が言う通りの犯罪者かもしれない。母を愛していたのかもしれないし、遊びだったのかもしれない。
どんな現実でも受け止めて私は前に進みたい。
だから私は就職して、お金を貯めてアメリカに行く」

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