天河と七星
※※※
古びて荘厳な木の門は劣化し、開くと嫌な音を立てる。

門の外には黒い車が止まっていた。
降りてきたのは天河のご家族だった。うちへ婚約の挨拶に来たのだ。

「本日はご足労いただき、ありがとうございます。こちらへどうぞ」

門をくぐり、草木が伸び放題の庭を抜け、大きさだけは立派な家に向かう。
先祖が残したこの家は築百年はゆうに超えていてあちこちぼろぼろだ。

かつては名家と言われた中條家。先祖から引き継いだ広大な土地は維持するだけでも大変で、相続のたびに細々と切り売りし、今はこの屋敷とその周辺だけを所有していた。


九条家の方々を大輔さんと七海が待つ客間にお通しする。


「はじめまして。天河の祖父、九条実朝(さねとも)と申します。こちらが天河の父久我大和(やまと)。母の華子(はなこ)と兄の大河(たいが)。本日は伺えませんでしたが、小学生の弟もおります」

こんなオンボロ屋敷にそぐわない、高名で雅やかなご家族だった。
お祖父様は大学の名誉教授。お父さんは世界に轟く大手総合電機メーカーCOOGAの創業者一族で今はCTOだという。それだけでもとんでもない家族だというのに、もうひとり。

兄の大河さんって、もしかして俳優の久我大河なんじゃ。
双子の兄がいるって聞いていたし、病院ですれ違ったこともあったけどまさか久我大河だなんて気づきもしなかった。

私、まだまだ天河のことよく知らない。

それなのに婚約しようとしてるんだから勢いって怖い。

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