天河と七星
「あのCOOGAの!すごいな。
しかもお兄さんは芸能人。あとで何枚かサイン下さい」

大輔さんはお金の臭いを嗅ぎ取って大喜びだ。昔から真面目にコツコツとやることが大嫌いで、働きもせず楽することばかり考えている。サインも売り飛ばす気だろう。

「天河は体が弱く普段から我慢ばかり。そんなこの子が初めて結婚したいなんてわがままを言ったんです。
でも、さすがに若すぎる。七星さんにも天河よりいい人が現れるかもしれません。
まずは婚約という形で、二人を見守っていけたらと」
「九条家の御子息なら大歓迎です」

天河のお父さんの言葉に、大輔さんは普段の厄介者扱いが嘘のように上機嫌だ。

だが七海は面白くなさそうだ。
ミーハーな七海は俳優久我大河のファンだった。大河さんが中高一貫で光英大学付属高に進学すると知って、自分も入学したくらい好きなのだ。

「ちょっと、待って。九条が大河くんの弟?名字が違うから気づかなかった」
「一の人で大河、二の人で天河。双子の兄弟だとわかりやすい名前だと思うけどね。顔だって似てる」

天河が七海をからかうように言った。

「全然似てない!七星が大河くんの親族になるなんて!そんなの許せない!」

七海は鬼の形相で私をにらみつけ癇癪をおこす。
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