天河と七星
天河のお祖父様のおっしゃっていることはもっともだ。九条家と中條家では家長の格があまりに違いすぎる。

「このままだと、僕の人生は短い。でも七星と生きる未来があるなら、勉強も治療もしっかりやる。
悪いけど家同士の繋がりなんて関係ない。そんなもののために七星を手放すなんて愚の骨頂だ」

天河も諦めない。ピリピリした空気感に私の緊張も増す。

「天河の好きにしたらいい。生きたいように生きればいい。好きな子とずっと一緒にいたいって気持ちも大事だ」
「天河が未来に向かって生きる気力に満ちあふれている。それだけで私は応援したいわ。
でも、七星さんの気持ちは?天河でいいの?この子は、生まれつき体が丈夫じゃないから苦労しますよ」

天河のご両親は息子の気持ちを尊重して、しかも私のことまで気にかけてくれた。

私は自分の気持ちの真ん中をたどる。
色々考えなきゃならないことがあるけれど、いちばん大切なのは『好き』の気持ち。

「正直、急すぎて気持ちがなかなか追いつきません。
ただ、私は天河さんが好きです。全身全霊で支えていきたい。
七海の体が弱かったのでお世話には慣れています。そこは任せてください」

私の決意を聞いて、天河の家族はみんな笑顔を見せてくれた。

「そうか。わかった。私も天河の意思を尊重しよう。
天河、若さと勢いだけじゃないってきちんと証明しなさい」

お祖父様とご両親の了承が得られたら、もう信じて天河についていくしかない。
天河が緊張して冷たくなっていた私の手をぎゅっと握ってくれた。


私もその手をぎゅっと握り返した。


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