天河と七星
大輔さんが玄関先でガラの悪い男と話し込んでいるところに出くわしたのだ。
とっさに隠れたけれど、会話が聞こえてしまった。

「九条や久我と血縁関係になるなんて。厄介者がまさかの金づるを連れてきました。
すみません、七星をお譲りする件はなかったことに」
「あの娘なら稼げるぞ?」
「でも、あちらのご子息も長くはない。七星に遺産が転がり込んでくれば。へへっ」

大輔さんがロクに働きもせず、家にある骨董品などを売りさばいてお金を作っていることは知っている。中條家の家長は大輔さんだから、家の物をどうしようが私には関係がないと思っていた。
それにしても、まさか大輔さんが私をヤクザに売り飛ばすつもりだったなんて。

大輔さんと話を終えて帰ろうとしていたヤクザをこっそり呼び止め、私は事実を知った。

中條家は想像以上の借金まみれ。
守っていたはずの家も土地もとっくに抵当に入っていた。
思っていた以上に悲惨な状況。

もちろん天河に助けてほしいとは言えなかった。

結婚は本人の気持ちだけじゃない。家と家の繋がりも生まれる。私の体の半分は中條の血だ。これは否定できない事実。
このままではアメリカへ渡ったとしても大輔さんはなにかにつけ金の無心をしてくるだろう。

私がなんとかするしかない。

未来ある天河の足をこんな金の亡者にひっぱらせるものか。
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