天河と七星

「そうかもしれません。
好きな気持ちだけで勢いで突き進めるほど、世の中甘くありませんでした。天河には心身ともに健やかに、才能を遺憾無く発揮してほしい。
中條のことで煩わせたくありません。
天河の顔を見るとうまく言えそうにありません。
手紙を書かせて下さい。
天河の体調がいいときに、離婚届と手紙を渡してもらえませんか?」

ご両親はハッと息をのみ、お祖父様は苦い顔をする。
そんななか、大河さんだけが大きくうなづいてくれた。

「わかりました。
天河のことはこちらに任せて下さい。七星さんは大丈夫ですか?
せっかくご縁があったのです。少しでも七星さんの助けになりたいのですが、我々にできることはなにかありますか?」

最後まで優しい大河さん。私は少しだけ考えて答えた。

「お言葉に甘えて、恥を忍んで1つだけお願いをさせて下さい。
COOGAへの就職。どんな仕事でも構いません、少しでも給与のいい部署にお願いします」

「わかりました。
でも、七星さん、あなたはそれで本当にいいんですか?天河のことを大切にしてくださっていることは我々ももちろん天河自身もわかっていることですよ」

私にさえこんなに親身になってくれて、天河は本当に素敵なご家族に恵まれてる。
正直、羨ましい。
だけど。

「あんな家でもここまで育ててもらった恩があります。私の養育費だってかかったはずですから。
人として礼儀を忘れ、彼らを捨てる生き方はできません。
これが一番いいんです。
こんな私を受け入れてくださって、ありがとうございました。
ご迷惑おかけすることになり、本当に申し訳ありません」


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