天河と七星
「キミは?」
「はじめまして。私はチュウジョウナナセといいます」

「ナナコ…」

博士が発した名前が母の名前と同じ音に聞こえた気がした。

「君の名は、Big Dipper?」

Big Dipperとは北斗七星のことだ。やっぱり、さっきの「ナナコ」は「ナナセ」の聞き間違いか。
私は、たぶん、としか答えられなかった。

「……君は、チュウジョウナナコの娘か?」

突如母の名前が出てきて、今度は私が息を飲む。
聞き間違いじゃなかった?

「母をご存知なんですか?」
「やっぱりナナコの娘なんだな。
ナナコとは学生時代、共に学んだ。キミは大学時代の彼女によく似てる。ナナコは元気にしているか?」
「母は亡くなりました。自分の命と引き換えに私を産んだのです」
「なんと……。きみのお父さんは?」
「生まれてから三十年近く、私に父がいたことはありません」

絶句する博士。
しばらくの沈黙のあと、息を整えて博士が話し始めた。
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