天河と七星

「ステラ博士が七星の父親だと確信した後で、今日を最後に縁を切るつもりで呼んだんだ。
待ち合わせの場所も時間も全然違うだろう。
全く、どこまで浅ましいやつらなんだ。
いい加減にしろ。七星は献身的に尽くしてきたはずだ。働かないキミ達のことを面倒を見てきたじゃないか。
かかった養育費は彼女自身がこの九年間で充分返した。
それに、僕の義父を侮辱したことも許さない。
ステラ博士はクズなんかじゃない。この世界で最高峰の天才だ。何も知らないというのはある意味無敵だな」

天河がこんなに冷酷な表情ができることに驚いた。
再会して以来、私に対して上司として接しているときのカッコつけた冷たさとは比にならない。

「うるさい!誰に向かって偉そうな口を聞いてるの!
私は中條家の娘よ。世が世ならばお姫様なのよ!」

苛ついた七海がトマトソースパスタの皿を手にとって天河に向かって投げた。

天河は車椅子。すぐには避けられない。
まずい、天河に当たる。

私はとっさに天河に覆いかぶさり、来たるべき衝撃に備えた。

でも、私には何も起きなかった。
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