天河と七星


「離して!」

大河さんがこれ以上暴れないように七海を羽交い締めにした。すると、大輔さんはニヤリと笑ってその様子をスマホの写真に収める。

「おいおい、うちの娘への暴行で訴えるぞ。そうすりゃ久我大河の芸能人生も終わりだな。黙っててやるから金、よこせ」

「大河を訴える?その前におまえらは地獄行きだ」

驚くことに、天河が腕を上げて合図をすると一斉に私服警備員が押し寄せ、七海と大輔さんを取り押さえた。

「僕がなんの対策もしていないと思ったか?お前たちが潜り込んでくることは、わずかながら可能性があったからな。
間もなく警察も到着する。到着するのが借金取りのヤクザじゃなくてよかったな。暴行罪くらいで命までは取られずに済むだろう。ささやかな温情だ。感謝するんだな」

天河がこんなに怒ったところを初めて見た。
しかも私のために怒ってくれている。

どうしよう。どんどん好きが溢れて止まらない。
こんなに迷惑かけたのに。


「天河、落ち着いて下さい。また具合が悪くなってしまう」
「僕は大丈夫だ。七星は大丈夫?」
「私は全然平気です。それより、ステラ博士が」
「すぐに着替えを用意する。
博士、七星の前でカッコよすぎです」
「今日から父親だからね。頑張らないと」

師弟関係の絆はまるで親子のように強い。
二人の関係に私の存在が割り込んでも大丈夫かしら。

ステラ博士は私にウインクをして、着替えに向かった。

ほどなくして警察が到着して、七海と大輔さんを連れて行った。二人はすさまじい形相で私を最後まで睨んでいった。

大河さんと天河は会場に参加していたプロジェクトチームのメンバーに事情説明をして騒動の収拾をしたり、警察の事情聴取に応じたり。二人を待つ私は少しでも静かなところでとの配慮から、ホテルの最上階のレストランで待つことになった。
< 64 / 67 >

この作品をシェア

pagetop