天河と七星


窓の外はいつしか暗くなっていた。
絶景を独り占めできる素敵な個室。灯りがあるから星はよく見えないけれど、眼下に広がる夜景はキラキラして美しい。


「七星さん、お待たせ」

しばらくすると、大河さんが天河とともにやってきた。
疲れた様子の天河を見て私はいたたまれなくなる。

「大事な決起会だったのに、本当にご迷惑をおかけしました」
「迷惑をかけたのはあいつらで七星じゃない。七星は充分尽くしたよ」
「私の性格的に、自分でもういいと思うまで面倒を見なければ後悔していた。この九年間はそのために必要な時間だった気がします」
「中條家はこれで終わりだ。
九年もあれば生まれたての赤ん坊だって小学生になって掛算やら割算ができるんだよ?それなのに何も変わらなかった彼らにはもう同情の余地はない。一切の関係を断つ。
彼らは自分で自分をあそこまで貶めたんだよ」

私を恨むように睨んでいった大輔さんと七海の顔がちらつく。あの二人が大人しくしているとは思えない。

「二人が逆恨みするかもしれません。これ以上迷惑をかけたくない」
「心配しないで。久我も九条もそんなやわじゃない。この時代の頂点を目指す我々は、必要なら冷酷に関係を断つことだってできるから」

天河は私に笑顔を向けてくれる。だけど私は笑えない。また迷惑をかけてしまった。
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