天河と七星
三月も末になり忙しさに拍車がかかる。
私は今日も残業だ。
「中條さん、終わるかぁ?」
「はい。もう少しです」
「俺もこの辺で切り上げよっと。帰って荷造りもしなきゃならないからな」
「部長、まだ荷造り終わらないんですか?」
「さすがに九年もいると荷物が増えててさ。びっくりしてる」
山口部長は出身大学が一緒で同じ教授のゼミの大先輩。そんな縁もあって私が入社したときからお世話になっている上司だ。
部長は四月の人事異動で本社に栄転することが決まっていた。
「最初は四、五年って言われてたのに九年もここにいたからなぁ。
中條さん、後はよろしく頼むね」
「はい、がんばります」