【コミカライズ化】追放された歌姫は不器用な旦那様に最愛を捧ぐ
24.反逆の意志は静かにばら撒かれる。
王都、とあるカジノにて。
「レイズ」
騒がしい喧騒の中で、一際楽しそうな声が響く。
仮面をつけ、扇子で口元を隠していることがより一層彼女の美しさを引き立てる。
「おや、いいのかい? レディ」
「かまいませんわー。お金は天下の回りもの。賭け事は派手でなくっちゃ♡」
そんな彼女のそばで自信なさげにオロオロしている金髪の青年は、何か言いたげに口を開くも声に出せず、ぎゅっと唇を結んだ。
「じゃあ遠慮なく。コール」
場にいる全員が賭け終わり、カード交換がなされる。
無邪気にはしゃぐ仮面の彼女は全カード交換を申し出る。
「レディ、失礼だがルールはご存知かい?」
「ふふっ、いいのよ、楽しければ。オールイン」
彼女の振る舞いに場がざわつく。
そしてカードが開かれて、彼女は全てのチップを失った。
「むぅ〜勝つって難しいのねぇ。あ、次はルーレットをやりたいわ」
まるで気ままな蝶のように紅いドレスを翻し、ひらりひらりと場を歩く彼女、マリナの腕を掴んだエリオットは、
「……マリナ、今日はもう」
と嗜める声をようやくあげる。
今日1日だけでかなりの金額をつぎ込んでおり、そしてずっと負け続けている。それでもマリナはカジノで遊ぶ事が気に入ったのか上機嫌に気前良く金を溶かす。
それらはもちろん全てエリオット経由で支払われたウェイン侯爵家の財だった。
「えーまだ遊び足りませんのにぃ」
不満気にそう言ったマリナはもう少しだけと可愛くねだる。
「流石に使い過ぎだ」
「そうですかぁ? ウェイン侯爵家の財からしたら、端金でしょう?」
確かにウェイン侯爵家の資産からすれば微々たる額かもしれないが、それでも湯水のように使っていいわけではない。
マリナはエリオットの婚約者になってから、当然のように様々なモノを強請るようになった。
家に商会の人間を呼びつけて宝石やドレスを強請るなら可愛いもので、今や気に入ればショップごと買い占める。
もちろん全てエリオットの支払いで。
今はまだ自分に割り当てられた財から賄えているから良いものの、このままのペースでは、そろそろそれすら厳しくなってくる。
「マリナ」
「足らないのなら、侯爵家ごとエリオット様の手中に収めてしまえば問題ないではありませんか」
ふふっとマリナは楽しそうにそう言って、通りすがりのボーイからワインを受け取る。
「私と一緒にいる事で、今まで交流のなかった沢山の上流階級の方達とお知り合いになれたでしょう?」
マリナはそっとエリオットの耳元で囁く。確かに、彼女の言う通りなのだ。
歌い手として呼ばれる以外社交の場にほとんど出されなかったエレナと違い、社交的で目立つマリナが築いた人脈のおかげで今まで交流のなかった派閥違いの人間とエリオットの間に繋がりができた。
彼らとの交流や情報交換はエリオットにとっても有意義であり、刺激的だった。
「私、思いますの。エリオット様はたかだか子爵領を治める程度の器ではない、と」
甘えるような声でそう言った後、マリナはエリオットの腕に手を絡める。
驚いたようにマリナを見つめれば、そうでしょう? と形のいい唇がそう囁く。
『どうして、自分は次男なのだろう。長男であったなら自分が侯爵家を継げたはずなのに』
そんな思いが頭をよぎった事は何度もあった。
にこっと仮面の奥のエメラルドの目が笑う。
どうして、彼女はこうも自分の自尊心をくすぐるのが上手いのか。
「ふふ、だからもっと景気良く経済を回していきましょ? 私達の未来のために」
言い返せなくなったエリオットの腕を引いて、マリナは無邪気にルーレットエリアに歩いて行った。
「レイズ」
騒がしい喧騒の中で、一際楽しそうな声が響く。
仮面をつけ、扇子で口元を隠していることがより一層彼女の美しさを引き立てる。
「おや、いいのかい? レディ」
「かまいませんわー。お金は天下の回りもの。賭け事は派手でなくっちゃ♡」
そんな彼女のそばで自信なさげにオロオロしている金髪の青年は、何か言いたげに口を開くも声に出せず、ぎゅっと唇を結んだ。
「じゃあ遠慮なく。コール」
場にいる全員が賭け終わり、カード交換がなされる。
無邪気にはしゃぐ仮面の彼女は全カード交換を申し出る。
「レディ、失礼だがルールはご存知かい?」
「ふふっ、いいのよ、楽しければ。オールイン」
彼女の振る舞いに場がざわつく。
そしてカードが開かれて、彼女は全てのチップを失った。
「むぅ〜勝つって難しいのねぇ。あ、次はルーレットをやりたいわ」
まるで気ままな蝶のように紅いドレスを翻し、ひらりひらりと場を歩く彼女、マリナの腕を掴んだエリオットは、
「……マリナ、今日はもう」
と嗜める声をようやくあげる。
今日1日だけでかなりの金額をつぎ込んでおり、そしてずっと負け続けている。それでもマリナはカジノで遊ぶ事が気に入ったのか上機嫌に気前良く金を溶かす。
それらはもちろん全てエリオット経由で支払われたウェイン侯爵家の財だった。
「えーまだ遊び足りませんのにぃ」
不満気にそう言ったマリナはもう少しだけと可愛くねだる。
「流石に使い過ぎだ」
「そうですかぁ? ウェイン侯爵家の財からしたら、端金でしょう?」
確かにウェイン侯爵家の資産からすれば微々たる額かもしれないが、それでも湯水のように使っていいわけではない。
マリナはエリオットの婚約者になってから、当然のように様々なモノを強請るようになった。
家に商会の人間を呼びつけて宝石やドレスを強請るなら可愛いもので、今や気に入ればショップごと買い占める。
もちろん全てエリオットの支払いで。
今はまだ自分に割り当てられた財から賄えているから良いものの、このままのペースでは、そろそろそれすら厳しくなってくる。
「マリナ」
「足らないのなら、侯爵家ごとエリオット様の手中に収めてしまえば問題ないではありませんか」
ふふっとマリナは楽しそうにそう言って、通りすがりのボーイからワインを受け取る。
「私と一緒にいる事で、今まで交流のなかった沢山の上流階級の方達とお知り合いになれたでしょう?」
マリナはそっとエリオットの耳元で囁く。確かに、彼女の言う通りなのだ。
歌い手として呼ばれる以外社交の場にほとんど出されなかったエレナと違い、社交的で目立つマリナが築いた人脈のおかげで今まで交流のなかった派閥違いの人間とエリオットの間に繋がりができた。
彼らとの交流や情報交換はエリオットにとっても有意義であり、刺激的だった。
「私、思いますの。エリオット様はたかだか子爵領を治める程度の器ではない、と」
甘えるような声でそう言った後、マリナはエリオットの腕に手を絡める。
驚いたようにマリナを見つめれば、そうでしょう? と形のいい唇がそう囁く。
『どうして、自分は次男なのだろう。長男であったなら自分が侯爵家を継げたはずなのに』
そんな思いが頭をよぎった事は何度もあった。
にこっと仮面の奥のエメラルドの目が笑う。
どうして、彼女はこうも自分の自尊心をくすぐるのが上手いのか。
「ふふ、だからもっと景気良く経済を回していきましょ? 私達の未来のために」
言い返せなくなったエリオットの腕を引いて、マリナは無邪気にルーレットエリアに歩いて行った。