【コミカライズ化】追放された歌姫は不器用な旦那様に最愛を捧ぐ
41.その歌姫は、婚家に染まる。
「メリッサは相変わらずですねぇ」
お久しぶりでーすと存在を主張したリーファは、
「エレナ様、こちらバーレーお抱えの仕立て屋メリッサ・メリーガード。城下町でメリーメリーという店を営んでおります」
エレナ様のドレスも全てメリッサの店の物ですよとエレナに紹介する。
「……メリーメリー?」
はて、どこかで聞いたようなとエレナは記憶を呼び起こすように瞬きをする。
思案する事数秒、不意にマリナの声が蘇った。
あれは確か、誕生日にエリオットから贈られたドレスを取り上げられた時の事だ。
『まぁ! 生意気。お姉様にメリーメリーなんて勿体無いわ。私がもらってあげますわぁ』
マリナはエレナから取り上げたドレスを自慢げに着こなし、
『メリーメリーは我が国の子女の憧れのブランドで令嬢としてのステータスなのよ? 社交もされないお姉様には必要ないでしょう?』
そんな事を語っていたなと思い出す。
「女の子に……人気、の?」
頭に浮かんだ諸々は隅に追いやって、エレナは端的に尋ねる。
「まぁ、ご承知頂けているだなんて感激ですわ! ま、外に出しているモノはありふれた量産品ですけれど」
パチンと手を叩きそう言ったメリッサはにこっと微笑むと、どこからか裁ち鋏を取り出す。
何に使うのかしらと思った瞬間、エレナの眼前で2種類の硬質な音が響き合った。
エレナは驚いたように目を瞬かせる。紫水晶の瞳に映ったのは、
「ほんっとーに、相変わらずですね。メリッサ」
そう言ったリーファのひらりとめくれたメイド服のスカートから覗く、高く上げられた鈍色をした足と、
「ふふっ、あーあ、いい! いいわぁ〜! 戦乙女の蹴り技。痺れますねぇ」
恍惚とした目で悶えながら、両手に裁ち鋏を構えているメリッサの姿。
リーファの義足とメリッサの裁ち鋏がかち合い、ギシギシと金属同士が擦れ合う音が部屋に響く。
「どうです? 新作のメイド服は! 機能性とデザイン性。乙女の夢を詰め込んで見たつもりですがっ!!」
そう叫びながら裁ち鋏でリーファの義足を払ったメリッサは、クルクルと裁ち鋏を軽やかに振り回しリーファに連続攻撃を加える。
「そうですねぇ、なかなかに便利ですよー」
それを難なくいなしながらそう言ったリーファは、メイド服の中から取り出したカトラリーを使って裁ち鋏とメリッサの動きを止める。
「ですが、エレナ様の前でこのようなお戯れはお控えくれます? エレナ様の情操教育によろしくありませんのでっ!」
そう言ってメリッサごと薙ぎ払おうとしたカトラリーはメリッサの裁ち鋏でまるで布でも切るかのようにジョキンと音を立てて破壊される。
「まぁ、お行儀の悪いメイドさん。背徳感がたまりませんわ〜」
不敵に笑うメリッサは、裁ち鋏を構え直しリーファに向けて攻撃を仕掛ける。
リーファは紅玉の瞳でそれらの動きを捉え、メイド服のスカートを翻し義足でそれを受けた。
「……ルル」
目の前で突如始まった攻防に驚き、これは一体? とエレナはルヴァルの名を呼びながら彼の袖口をひく。
「心配するな。ただの機能テストだ。……それにすぐ終わる」
ルヴァルがそう言った瞬間、リーファの蹴り技が決まり、宙をまった裁ち鋏が壁に刺さる。
「城内での戦闘行為はほどほどに願います」
床に薙ぎ倒されたメリッサの顔のすぐ横にダンッと足をめり込ませたリーファはそう言って、メイド服を軽く持ち上げ礼をする。
「ま、でも確かに良い制服ですよ。武器仕込み放題。動きも邪魔せず防御力も高い」
リーファは高評価を述べてメリッサを起き上がらせる。
「ふふ、お気に召して頂けたようでよかったです」
今後ともぜひご贔屓に♡とその手を取ったメリッサは、
「あーでも私の想像ではもっと華麗にスカートがはためく感じだったのですよねぇ。まだまだ改善の余地がありますわね! イマジネーション湧きまくりですわぁ〜」
闘うメイドさん、いいと拳を握りしめメリッサが楽しげに笑った。
「おい、コラ、リーファ。お前壁と床、あとその他諸々破壊すんじゃねぇ! あとメリッサ。その裁ち鋏は戦闘仕様じゃねぇっていつも言ってんだろ!? また刃欠けてんじゃねぇか!!」
2人の戦闘が収束したところで、この惨状どうしてくれるとノクスが2人に怒鳴る。
「「え? ノクスが直せばいいのでは?」」
が、ピタリと揃った声が当然のようにそう言った。
「あ、せっかくなので私の裁ち鋏は錬成し直す際もう少し硬度を上げてくださる?」
壊れちゃいましたとノクスの前に裁ち鋏を差し出したメリッサはちゃっかりそう注文をつける。
「俺は便利屋か!!」
「え? 違いますの?」
「違うわっ!!」
シャーと怒った猫のように言い返すノクスを見ながら、
「ふふ、でもノクスの錬金術が一番扱いやすい素敵な裁ち鋏を作ってくださいますの。次は壊さないように気をつけますので修理をお願いいたします」
メリッサは綺麗な微笑みを浮かべ裁ち鋏を差し出す。
"一番"の響きに照れたように黄色の瞳を逸らしたノクスは、
「っち、しゃーねぇな」
と舌打ちしながら裁ち鋏を受け取った。
「さすがノクス。チョロさ城内一」
揶揄うようにそう言ったリーファに、
「リーファ、お前義足直してやんねぇぞ。関節部分、一発入って傷ついたろ」
ぎろっとノクスは睨む。
「え、ヤダ。困るんだけど!」
ごめんってとリーファが軽く謝りながら、ごはん奢るからーと修理依頼をする。
そんな光景を見ていたエレナは、
「ルル、今日もバーレーは賑やかね」
誰も怪我がなくて良かったと笑う。
「コレを"賑やか"で済ませるか」
ルヴァルはエレナの頭を撫で、うちに染まってきたなと苦笑しながら、エレナがこれから先もここでこんな風に笑ってくれたらいいなとそんな事を考えた。
お久しぶりでーすと存在を主張したリーファは、
「エレナ様、こちらバーレーお抱えの仕立て屋メリッサ・メリーガード。城下町でメリーメリーという店を営んでおります」
エレナ様のドレスも全てメリッサの店の物ですよとエレナに紹介する。
「……メリーメリー?」
はて、どこかで聞いたようなとエレナは記憶を呼び起こすように瞬きをする。
思案する事数秒、不意にマリナの声が蘇った。
あれは確か、誕生日にエリオットから贈られたドレスを取り上げられた時の事だ。
『まぁ! 生意気。お姉様にメリーメリーなんて勿体無いわ。私がもらってあげますわぁ』
マリナはエレナから取り上げたドレスを自慢げに着こなし、
『メリーメリーは我が国の子女の憧れのブランドで令嬢としてのステータスなのよ? 社交もされないお姉様には必要ないでしょう?』
そんな事を語っていたなと思い出す。
「女の子に……人気、の?」
頭に浮かんだ諸々は隅に追いやって、エレナは端的に尋ねる。
「まぁ、ご承知頂けているだなんて感激ですわ! ま、外に出しているモノはありふれた量産品ですけれど」
パチンと手を叩きそう言ったメリッサはにこっと微笑むと、どこからか裁ち鋏を取り出す。
何に使うのかしらと思った瞬間、エレナの眼前で2種類の硬質な音が響き合った。
エレナは驚いたように目を瞬かせる。紫水晶の瞳に映ったのは、
「ほんっとーに、相変わらずですね。メリッサ」
そう言ったリーファのひらりとめくれたメイド服のスカートから覗く、高く上げられた鈍色をした足と、
「ふふっ、あーあ、いい! いいわぁ〜! 戦乙女の蹴り技。痺れますねぇ」
恍惚とした目で悶えながら、両手に裁ち鋏を構えているメリッサの姿。
リーファの義足とメリッサの裁ち鋏がかち合い、ギシギシと金属同士が擦れ合う音が部屋に響く。
「どうです? 新作のメイド服は! 機能性とデザイン性。乙女の夢を詰め込んで見たつもりですがっ!!」
そう叫びながら裁ち鋏でリーファの義足を払ったメリッサは、クルクルと裁ち鋏を軽やかに振り回しリーファに連続攻撃を加える。
「そうですねぇ、なかなかに便利ですよー」
それを難なくいなしながらそう言ったリーファは、メイド服の中から取り出したカトラリーを使って裁ち鋏とメリッサの動きを止める。
「ですが、エレナ様の前でこのようなお戯れはお控えくれます? エレナ様の情操教育によろしくありませんのでっ!」
そう言ってメリッサごと薙ぎ払おうとしたカトラリーはメリッサの裁ち鋏でまるで布でも切るかのようにジョキンと音を立てて破壊される。
「まぁ、お行儀の悪いメイドさん。背徳感がたまりませんわ〜」
不敵に笑うメリッサは、裁ち鋏を構え直しリーファに向けて攻撃を仕掛ける。
リーファは紅玉の瞳でそれらの動きを捉え、メイド服のスカートを翻し義足でそれを受けた。
「……ルル」
目の前で突如始まった攻防に驚き、これは一体? とエレナはルヴァルの名を呼びながら彼の袖口をひく。
「心配するな。ただの機能テストだ。……それにすぐ終わる」
ルヴァルがそう言った瞬間、リーファの蹴り技が決まり、宙をまった裁ち鋏が壁に刺さる。
「城内での戦闘行為はほどほどに願います」
床に薙ぎ倒されたメリッサの顔のすぐ横にダンッと足をめり込ませたリーファはそう言って、メイド服を軽く持ち上げ礼をする。
「ま、でも確かに良い制服ですよ。武器仕込み放題。動きも邪魔せず防御力も高い」
リーファは高評価を述べてメリッサを起き上がらせる。
「ふふ、お気に召して頂けたようでよかったです」
今後ともぜひご贔屓に♡とその手を取ったメリッサは、
「あーでも私の想像ではもっと華麗にスカートがはためく感じだったのですよねぇ。まだまだ改善の余地がありますわね! イマジネーション湧きまくりですわぁ〜」
闘うメイドさん、いいと拳を握りしめメリッサが楽しげに笑った。
「おい、コラ、リーファ。お前壁と床、あとその他諸々破壊すんじゃねぇ! あとメリッサ。その裁ち鋏は戦闘仕様じゃねぇっていつも言ってんだろ!? また刃欠けてんじゃねぇか!!」
2人の戦闘が収束したところで、この惨状どうしてくれるとノクスが2人に怒鳴る。
「「え? ノクスが直せばいいのでは?」」
が、ピタリと揃った声が当然のようにそう言った。
「あ、せっかくなので私の裁ち鋏は錬成し直す際もう少し硬度を上げてくださる?」
壊れちゃいましたとノクスの前に裁ち鋏を差し出したメリッサはちゃっかりそう注文をつける。
「俺は便利屋か!!」
「え? 違いますの?」
「違うわっ!!」
シャーと怒った猫のように言い返すノクスを見ながら、
「ふふ、でもノクスの錬金術が一番扱いやすい素敵な裁ち鋏を作ってくださいますの。次は壊さないように気をつけますので修理をお願いいたします」
メリッサは綺麗な微笑みを浮かべ裁ち鋏を差し出す。
"一番"の響きに照れたように黄色の瞳を逸らしたノクスは、
「っち、しゃーねぇな」
と舌打ちしながら裁ち鋏を受け取った。
「さすがノクス。チョロさ城内一」
揶揄うようにそう言ったリーファに、
「リーファ、お前義足直してやんねぇぞ。関節部分、一発入って傷ついたろ」
ぎろっとノクスは睨む。
「え、ヤダ。困るんだけど!」
ごめんってとリーファが軽く謝りながら、ごはん奢るからーと修理依頼をする。
そんな光景を見ていたエレナは、
「ルル、今日もバーレーは賑やかね」
誰も怪我がなくて良かったと笑う。
「コレを"賑やか"で済ませるか」
ルヴァルはエレナの頭を撫で、うちに染まってきたなと苦笑しながら、エレナがこれから先もここでこんな風に笑ってくれたらいいなとそんな事を考えた。