気まぐれランデブー
「……ちゃん。すーうーちゃん」
びく、と肩が震える。そのようすを見て彼────五月雨(さみだれ)さんは小さく笑った。
「考えごと?」
「ん」
「そかそか。余裕だね」
出会った日に連絡先を交換して、それから雨の日にはこうして待ち合わせをするようになった。
神様の気まぐれで天候が左右されているとしたら、私たちの待ち合わせも気まぐれなんだと思う。
一度目の出会いは偶然。それから、初めての待ち合わせ。
私はひどく緊張していた。
わざわざ相合傘になるように仕向けられてしまい、肩を触れ合わせながら歩いた日。
初対面で傘を借りたためハードルが下がったのか、彼はいつも傘を持ってこないのだ。
五月雨さんの声が雨の中私だけに響いて、逃げられない距離と漂う色気に倒れるかと思った日。
それが今はずいぶん慣れてきて、呼吸も整っている。
慣れ、ってこういうことなのだろうか。
人を好きになって、結ばれて。
そうすると、今まで感じていたドキドキやトキメキが、いつしか当たり前のものとなってしまう。
そんなふうに、恋愛は慣れていくものなのだろうか。