人狼様と魔王の側近
「よし!張り切ってやるぞ!」

「僕たち、いつでも大丈夫だよ」

アーサーが剣を構え、ティムが笛を取り出しながら言う。二人とも張り切っている。その様子を見たルーチェも、覚悟を決めて呪具を構えた。

「ビオラ、お願い」

クラルが剣を構えてヴィオレットを見ながら言うと、彼は小さく頷いた後、呪具を地面に突き刺し、何かを呟く。その呪文はルーチェの耳には蛇が威嚇をする時に発する噴気音のように聞こえた。

刹那、地面が大きく揺れ動く。体が倒れないようにするだけでも精一杯だ。ルーチェたちがその揺れに耐えていると、地面から腕が現れた。真っ暗に変色したその腕は、生者の腕だとは誰も思わないだろう。

異臭を放ち、黒く腐り切った体を持った怪物が次々と地面から姿を現す。ヴィオレットの魔法で生み出された幻影の死者たちだ。幻影といっても、彼らはルーチェたちに攻撃をすることができ、ルーチェたちもまた死者に攻撃をすることができる。

「じゃあ、始めようか」

クラルのその一言で、強化訓練が幕を開けた。
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