人狼様と魔王の側近
そう話すイヴァンとヴァイオレットをチラリと見た後、ルーチェとクラルは球体に近付いた。

「ルーチェ、どう思う?」

「強いモンスターというわけではなさそうだね。本体としては弱いと思う」

ただ、この球体が本と大きく関係しているのではないかということをルーチェは気付いていた。そっと手を伸ばして球体に一瞬触れる。

「うっ!」

刹那、ルーチェの頭が強く痛み始めた。「ルーチェ!?」と言いながらみんなが駆け寄る。ルーチェの頭の中には、様々な呪いの言葉が渦巻いていた。何十人もの人の声だ。

『苦しい……。どうしてあいつはこの苦しみを味わってくれないの!?』

『呪ってやる!この小説で!』

『地獄に落ちろ!!』

人の呪いの言葉にルーチェは大声を上げた。恐怖だけでなく、怒りや悲しみが胸の中に押し寄せてくる。頰を涙が伝った。

「ルーチェ!!」

アーサーとティムが肩を大きく揺さぶる。フェリシアーノたちはルーチェに魔法をかけて呪いから解放しようとし、クラルとヴィオレットは目配せをし、球体に向き直る。
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