海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
止まっていた世界が動き出したー・・・
大袈裟に聞こえるかも知れないが、俺がコイツと・・・萩花と別れてから色が無くなった世界がっ・・・今この瞬間、急に動き出したような気がした。
『お前の言い訳は後で聞く。陸に着いても俺から離れるな』
なんて、冷静を装ったようなことを言いながら、俺の心境は穏やかではなかった。
今まで決して適当に救助をしてきた訳じゃない。でも、どこかで相手のことも自分自身も・・・助からなかったとしても、その時はその時だっ・・・なんて考えていたのが正直な気持ちだ。
─…でも、今は違う。
何が何でも、生きてコイツを絶対に助けてやりたいと心から思った。萩花だけじゃない・・・自分自身も一緒に生きて、もう一度萩花と話しがしたいっ・・・声が聞きたいっ。
こんな風に心の底から自分も、相手も絶対に生きて助かることを願いながら仕事にあたるのは、きっとこれが最初で最後だろうと悟った。
─…あぁ、辞めよう。
救助をしながら、仕事を辞めることを誓う俺は、人としてどうかしてると思う。別に他人に何を思われようが俺にとってはどうでもいい。
空中で萩花のことをグッと引き寄せて抱きしめる。俺と萩花の間に挟まれて眠っている幼い子どものことは、後で話しを聞けばいい。
何にせよ、いまここで俺の前に現れたお前を・・・勝手だが、俺はもう二度と離してやるつもりはない。