海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜


つい先程まで私、、尾藤(びとう) 萩花(しゅうか)の恋人"だった"目の前にいるこの仏頂面の男

─…潮崎(しおざき) 凪砂(なずな)

凪砂なんて女の子みたいな名前だけど、彼のルックスに女の子らしい要素などこれっぽっちもない。

187センチの高身長に加え、鍛え上げられたその身体は、服の上からでもいい身体だと見て分かる。それだけでも十分にモテる要素を兼ね備えているのに、この男に関しては兎にも角にも、顔面偏差値が半端ない。


前髪をあげた短髪の麗しい黒髪、くっきり二重瞼にキリッとした眉、筋の通った鼻に、シャープな輪郭が作る綺麗なEラインの横顔。

それに極めつけは、、彼の勤めている職業。


【⠀ 海上保安官 ⠀】

海上保安庁の中でも様々な職種があるらしく、海上という名がついているからと言って、皆が皆海の上にいる訳ではないらしい。


凪砂はそこで、潜水士として日々の多くを海の上で過ごしているみたいだが、海上保安官の中で実際救難隊として活躍しているのはほんの僅かなのだとか。

それだけでも十分に凄いと思うが、凪砂はその中でも少し上の階級らしく、かなりエリートな人材みたいだった。



恋人のことなのに【〜らしい】とか【〜みたい】っと語ってしまうのは、正直私も凪砂がどんな仕事を任されているのか…知らない事が多かったからだ。



国家公務員の人命救助にあたる人や、特殊部隊と呼ばれる人達には"守秘義務"というものが存在するらしく、親しい者にも任務の内容などを口外することは禁じられているのだとか、、



そのため…約束なんて破られるのが前提みたいなもので、デートの途中で置き去りにされるなんてことは良くあることだった。


それでも嫌味や文句一つ言わず、顔面に精一杯の笑顔を貼り付けて送り出してきたのにっ!!



(いま、なんて言われた……?)


20代ラストを迎えた誕生日の今日、まさかここで別れを切り出されるなんて夢にも思わなかった。


約束を基本守ることの無い凪砂が、誕生日のお祝いをしてくれると言って、この有名ホテルの高層階のお店を待ち合わせ場所に指定してきた時は、本当にドキドキしたし、少し気合を入れてお洒落をしてここまで来たのに…



1ヶ月ぶりに見た凪砂の顔は、いつも以上に冷たくて、感情を読み取ることなど出来ないほどに色がない。


会わなかったこの1ヶ月の間に、凪砂の中で何か大きな心境の変化でもあったのだろうか?それとも言葉には出来ない、感情にも出せないほどに・・・辛い出来事でもあったの、、?



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