海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜



そう思ってしまうほどに、私たちが一緒に過ごした時間はあまりに少なかった。付き合って二年と言っても、実際に会った回数は両手で収まるほどしかないかもしれない。


「萩花、お前30歳になるまでに結婚したいってずっと言ってただろ?それ、叶えてやれそうにないから・・・だから今日別れを告げるつもりだった。」


(─…あぁ、そういうことか。)


つまり二年かけても凪砂の中で結局私は"一番"にはなれなかったって、そういうことなんだ。


「優香(ゆうか)のことを忘れられないから、私とは一緒になれない…って、そういうことでしょ?」



─…帆波(ほなみ)優香(ゆうか)


彼女は凪砂の元恋人で、私もよく知る人物だった。凪砂は今でも優香のことを忘れられずにいるんだ。


「いや、優香のことはまた別の問題だ。俺はお前との関係の話をしてる。」


別問題ってことは少なからず、頭のどこかでまだ優香のことを考えてるってことでしょ…?


「今、俺と別れたらあと一年あるだろ。その間に好きなやつを見つけて結婚すれば、30歳までに嫁げる。だから別れてやるって言ってるんだよ。優香は関係ない」


「いや、あのさっ!何か勘違いしてないっ?!私は誰でもいいから結婚したい訳じゃないよ?凪砂だからっ・・・凪砂が好きだから、結婚したいんだよっ?!別に30歳で結婚出来なくてもいいっ…40歳でも50歳でも待つから・・・だからっ」


─…別れるなんて言わないで



そう続くはずだった私の言葉は、凪砂の携帯の着信音によって遮られた。


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