海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜


「─…悪い」


そう言って席を立つ凪砂の後ろ姿を、私は今まで数え切れないほど見てきた


ーー・・・そう、もうずっと前から


私は凪砂の背中を見続けてばかりだ。


***


私と凪砂は、海上保安庁や公務員の集まる婚活パーティや、友人の紹介といった運命的な出会い方をした訳では無い。


もっとベタで良くある"高校の同級生"というやつで、凪砂が海上保安庁に入るずっと前、学生の頃から彼の事を知っていた。

っと同時に、その頃から私は凪砂のことが好きだった。昔から背が高くてかっこよかった凪砂はとにかくモテたが、凪砂には"優香"という彼女が居たから、他の女子が近づくことなんて出来なかった。


皮肉にも私は優香とは中学の頃から仲が良くて、そのおかげで凪砂と距離を縮めることが出来た。凪砂も優香の友人である私を認識してくれて、凪砂の友達も一緒に交えて、高校時代は同じメンバーで過ごした。


高校を卒業してそれぞれの進路へ向かっても、その関係性は変わらなくて、凪砂は相変わらず優香と続いていたし、他のみんなとも時間を合わせてたまに集まったりしていた。


しかし、その関係性が崩れたのは優香が大学4年になった年の夏のことだった。


大学の夏休み期間に沖縄に旅行に行った優香は、そこで水難事故に遭い…帰らぬ人となってしまったのだ。


その間、海上保安大学校に通っていた凪砂は、実習期間だったのか、訓練だったのか詳細は知らないけれど。全く連絡がつかず…凪砂が優香の死を知ったのは、優香が亡くなってから二週間が過ぎた頃だった。


< 6 / 134 >

この作品をシェア

pagetop