【完結】不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~
「桃花、潰れないように此処にいろ」
「あ、ありがとう……」
桃花が潰れないように、腕の隙間に入れてくれる紅緒。
「(紅緒くん……優しい……)」
紅緒は桃花より、ずっと背も高い。
目の前に見えるのは第二ボタン。
「次で降りるからな」
「うん……あっ」
初めての満員電車に戸惑う桃花の手を紅緒が握る。
「駅内も混んでるから、掴んでろ」
「う、うん……ありがとう」
なんとか人に揉まれながら降りる事ができた。
「都会、すごい……はぁクラクラ~村ですれ違う1年分、今日で更新した感じ」
「はは、そうだな。でも慣れるさ。何もなければ迎えに来てやっから、修行頑張れよ」
「う、うん……!!」
改札を抜けても手は握ったまま、寮へ向けて歩き出す。
「(こ、これって……都会じゃ普通……?)」
「夕飯なんだろな~~」
「(紅緒くんは……手を繋いでても……普通だけど、こっちはなんだかドキドキしちゃうよ~~)」
「夕子さんの飯はなんでも美味いから」
あれだけ食べても、紅緒はすぐにお腹が空いたようだった。
そして少し歩いたところ、暗いモノレールの高架下から何か聞こえた。
瞬間、空気が緊張する――!!
「……悲鳴だ……!」
「えっ」
「行くぞ!」
「は、はい!」
走り出す紅緒に、桃花も走り出す。
公園のようなスペースだった。
真っ黒な霧が見える。
「残穢か……」
「うっ……!」
桃花が口を押さえる。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
吐き気がする黒い霧。
紅緒が刀を出現させて一振りすると、黒い霧は消えた。
「妖魔はいない……でもこの……気配は……」
「あ、あれは……」
暗い公園にボウ……っと何か光っている。
警戒しながら紅緒が近づいて、拾い上げた。
「……スマホだ……」