【完結】不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~
「桃花……?」
「思い出したの……私も……」
ジリっと指先が熱くなる、その手に紅緒も自分の手を重ねた。
ふわりと温かい炎が舞って、紅緒の傷が治っていくのがわかった。
「そうか……俺も、また色々と思い出した」
「うん」
頬から手は離れても二人の手は結ばれたまま。
「……記憶がなくても、俺はずっと心の奥で誰かを想ってた……それは桃花だったんだな」
まわりから女嫌いなんて言われていたのは、ずっと心の奥底で桃花を思っていたからだった。
「……紅緒くん……ごめんなさい、私……忘れてしまってて……」
桃花も誰かに恋をする事はなく、過ごしてきた。
でも、ずっと紅緒の存在を忘れていたことがズキズキと胸を痛ませる。
でも紅緒は、優しく微笑んだ。
「桃花は不死鳥に加護されて、記憶をより強く消されたはずだ。忘れていたって俺は何も気にしないさ。大事なのはこれからだ」
「うん……」
「俺は桃花を、これからも守り続ける……誰よりも強くなる」
握られた手に、少しだけ力がこめられた。
「俺はお前が好きだ、桃花」
優しく微笑んだ紅緒の口から出た、彼の心からの言葉。
「うん……うん……わたし……」
桃花も答えようとした時、頬を優しく撫でられた。
「まだ桃花は答えなくてもいい。記憶が戻ったばかりだ。五歳の俺じゃなく、じっくり今の俺に惚れさせてみせるさ」
「べ、紅緒くん」
「それから、また約束しよう」
自信たっぷりに、紅緒はニヤリと笑った。
頬が熱くカーっとなる。
約束……花嫁になる約束。