【完結】不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~

 初夏の香りがする。爽やかな朝だ。
 男子達に囲まれての登校。

「(私がこの中にいるの見られたら、絶対ヒソヒソされるよね)」

 案の定、学校へ向かう生徒達が、突然混ざった女子二人を驚いて見ている。

「姫。どうせ注目されるのであれば、わざわざ地味な格好をする事もない気がするが……」

「だよねぇ、美少女っぷり見せつけてやればいいんじゃないのぉ?」

 辰砂と珊瑚が言う。

「でもそしたら、お姉ちゃんがモテモテになっちゃうよ」

「俺は地味子は、地味子でいいと思うぜ、なぁ総長」

 続いて苺と柘榴が言う。
 
「そうだな。ファンクラブなんかできても、また面倒だろう」

「(ファンクラブ!?)」

 桃花は焦る。

「そ、そんな事あるわけないよ! 私はこのままでいいし、どんな格好しててもみんなのファンには嫌われるだろうから」

「何かあったら、必ず俺やこいつらに言うんだぞ」

「う、うん……わかった」

「お姉ちゃんはあの蒼玉にも、速攻で目をつけられてたしね」

 蒼玉……氷のような美少年だ。
 綺麗な美しい瞳なのに、見つめられた時の寒気がまた蘇る。

「彼は一体、何者なの?」

「俺達と敵対するチームの親玉、総長だ。んで向こうにも四人強いのがいる」

「えっ……向こうにも四天王が……」

「俺達の方がつえーから心配すんなよ地味子」

「それはそう☆」「だよねぇ」「そのとおり」
 
 『紅刃斬』と『蒼騎審』
 いつまでも続く、人間を守るあやかしと人間界に攻め込みたいあやかしとの闘い。
 
「あいつらは陰湿な闇そのもの……いつでも人間を闇に誘うんだ」

「闇に……」
 
「一気に話したら不安になるだろうから、徐々に説明していくさ。大丈夫、俺達は負けやしない」

「うん。紅緒くんも、みんなの事も信じてる」

 昨日の戦いで見た。紅緒と四天王の強さはわかっている。
 大人達が彼らに委ねているのだ、それだけの強さがある。

「私も、みんなの力になりたい……!」

「あぁ、サンキュ」

 紅緒の微笑みも、青空に輝く太陽も、眩しい。


 でもその光が作る影の中に蠢く闇がある……。
 また闇が動き始めた……。

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