ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「そうか、そんな事が」
「本当に、申し訳ありませんでした」

 翌日、彼から話を聞いた社長に呼び出された私は事の顛末を話し謝ると、

「南田くんが謝る事ではない。話を聞く限り、悪いのは雪蛍の方だ。申し訳ない」

 孫が悪いと逆に頭を下げられてしまう。

「そんなっ! 社長が謝る事ではないです! どうか頭を上げて下さい」
「南田くん、雪蛍はもういいと言っているが、もう一度アイツと向き合ってもらう事は出来ないだろうか?」
「……私は、そのつもりです。来なくていいと言われましたが、今後も彼のサポートを続けさせて頂きたいと思ってここへ来ました」

 私は昨日一晩考えた。彼が私を必要としていないなら、マネージャーは降りるべきなのではないかと。

 けど、一度やると決めた事を途中で投げ出したりしたくはないし、何より彼にもっと寄り添いたいと思ったのだ。

「そうか。そう言ってくれたのは君が初めてだよ。雪蛍は物心ついた頃に両親を事故で亡くしてから私が引き取ったのはいいが、忙しくていつも家政婦に任せきりだった。私や家内は仕事に追われて傍に居てやれない代わりに欲しい物は何でも与えたし、やりたいと言う事は全てやらせてきた。しかし、その結果我儘に育ってしまったんだ」

 私の言葉を聞いた社長はポツリポツリと彼の事を話してくれた。

 話を聞いて思ったのは、彼の我儘は淋しさの裏返しなのではないかという事。

 そして、我儘を言っても何をしても、それを叱り、尚且つ傍に居てくれる人を探し求めているのではないかという事だ。

「南田くん、どうかこれからも雪蛍の事を宜しく頼む」
「はい。私なりに精一杯頑張って、彼と向き合っていきたいと思います」

 意思を伝えた私は一礼して社長室を後にして、すぐさま彼の居る撮影スタジオへ向かった。
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