ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「雪蛍くん、お疲れ様」

 撮影が終わると同時に彼の元へ駆け寄って声をかけると、雪蛍くんは酷く驚いた表情で私を見た。

「お前、何で」
「今朝は迎えに行けなくてごめんなさい。社長と話をしていたので」
「……ああ、辞める話をして来たのか」
「……ひとまず、車へ行きましょう」

 私は今この場では話を広げずに車へ行こうと提案すると、意外にも彼は素直に従った。

 そして、地下駐車場に停めてある車へ乗り込んだ私たち。

 普段は後部座席に座る彼だけど、話をする為なのか、今日は助手席に座っていた。

 どちらも口を開かず、無言の時間が続いていく中、

「……で、何でここへ来た? 俺はもう、来るなと言ったはずだぜ」

 沈黙を破ったのは彼の方で、ここへ来た理由を問われた私は、

「勿論、仕事だからです」

 と迷わず答えた。

「はぁ? だから、俺は来るなと言ったんだ。人の話聞けよ」
「確かに、雪蛍くんは私に来るなと言いましたが、私を雇っているのは社長です。社長に言われない限り、私は与えられた仕事をこなします」
「何だよ、それ」
「それに、社長とはきちんとお話をして、これからも雪蛍くんのマネージャーを続けていくようお願いされました」
「ったく、あのじじい……何勝手に」
「雪蛍くん、私に不満があるなら何でも言って下さい。直せるところは頑張って直します。だから、その代わり雪蛍くんも、我儘なところや仕事に対する姿勢をもっと見直して欲しいんです」
「はぁ?」
「雪蛍くんも薄々気付いているとは思いますけど、現場での評判、あまり良いものではありません。それが何故か、分かりますよね?」
「知らねぇよ……そんなの」

 これ以上話を聞きたくないと言わんばかりに、顔を背ける彼。

 こういうところはまだまだ子供なのだ。
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