ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「雪蛍くん……私は、あなたに変わって欲しい。だって、何も知らない人たちに好き勝手言われるなんて……すごく悔しいから」

 顔を背けた彼は何も答えないけれど、それでも私は話を続けた。

「雪蛍くんが誰よりも努力してる事、私は知ってます。それに……いつも我儘を言ったりするのは、それを本気で叱ってくれる人を待っていたからですよね」
「!」

 図星だったのか、彼の肩が僅かに動く。

 雪蛍くんが売れっ子なのは恵まれた環境や才能も勿論あるけれど、それ以上に彼が人知れず努力をしているから。

 口も態度も悪いけど、ドラマに出る事が決まった時は台本を常に持ち歩き、どんな時でも台詞覚えを欠かさない。

 モデルの仕事がいつ来ても良いように、体型には常に気を使っているし、ファッションについても沢山勉強している。

「私は、そんな風に一生懸命やっている雪蛍くんを見捨てたりはしません。いけない事をした時はきちんと注意します。だから、これからもあなたのマネージャーとして、傍に居させてください」
「何、分かったような事言ってんだよ」
「違いますか? 私には、淋しがっているように見えましたよ、ずっと」
「……馬鹿じゃねぇの、お前」
「そうですね、馬鹿かもしれません。馬鹿なマネージャーは、やっぱり嫌でしょうか?」

 未だこちらを向いてくれない彼だけど、何となく、今どんな表情をしているのかは分かる気がした。

「……勝手に、すれば」

 涙は流していないだろうけど、きっと、泣きそうな表情をしているであろう彼のその言葉を聞いた私は、

「はい、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね、雪蛍くん」

 そう口にしながら膝の上に置かれた彼の右手を優しく包み込んだ。
< 13 / 94 >

この作品をシェア

pagetop