ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「そういえば雪蛍くん、最初は私に優しくしてくれたのに、どうして突然意地悪する様になったの?」
「は?」
「だから、その……ミスしたら……お仕置……なんて」

 そう、ずっと気になっていたのは、優しかった彼が突然豹変した事。

 何が彼をそうさせたのか知りたかった私は彼の答えを待つ。

「……そ、それは……」
「それは?」
「お前が……他の男と親しげに話してるの、見たからだよ」
「え?」
「アイツだよ、横河(よこかわ)
「横河さん?」

 彼の言う横河さんというのは、SBTNエンターテインメントの中で一番と言われる優秀なマネージャーで、私にとっては大先輩にあたる人。

「アイツとしょっちゅう話してるの見た……。飯にも誘われてたしよ」

 確かに、横河さんは私が入社当時から良くしてくれたし、何度か食事に行った事もあるけれど、それはあくまでも仕事の延長というか、マネジメントのイロハを教えてくれる為。

「横河さんは私にとって大先輩だし、仕事でお世話になってるだけだよ?」

 心配する事なんて何も無いのだけど、どうやら彼は気に入らない様で、

「俺は嫌なんだよ。アイツ、絶対お前に気があるし」
「そんな事ないよ」
「いや、絶対ある! いいか? 今後アイツと二人きりで飯とか絶対行くなよ?」

 二人きりにならない様に念を押してくる。

「……分かった。でも、仕事でどうしても必要な時は大目に見てね?」
「……その時は、俺も同伴する」
「もう、雪蛍くんったら」

 彼の意地悪はどうやら嫉妬から来ていたものらしく、それを知った私は微笑ましく思った。

「ありがとうね、雪蛍くん」
「な、何だよ、急に」
「心配してくれてるんだよね。嬉しいよ」
「……あっそ」
「私、雪蛍くんのマネージャーになれて良かった。仕事はまだまだだけど、これからも期待に応えられるよう頑張るね」
「……お前は十分頑張ってるよ」
「え?」
「つーか、俺のマネージャーはお前にしか務まらねぇの。だから気負うな。これからも今まで通りでいいから」
「雪蛍くん」
「仕事でもプライベートでも、俺のサポート頼むぜ、莉世」

 彼はそう言って私の顎を軽く持ち上げると、唇を重ねてくる。


 意地悪でヤキモチ妬きの彼を、私はこれからも放ってはおけないの。


 だって、彼の事が――誰よりも大好きだし、不器用な彼の愛情は、私にしか受け止めきれないと思うから。
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